
3月某日、20:42。
ここは、とある都内のバー。
カウンターに、塾長三井は座っていた。
隣にいるのは、高校時代の同級生の高橋君(仮名)
彼には、中学受験をする息子さんがいる。
そこで高橋君は、子どもの中学受験を成功させるためのアドバイスを求めて、三井に連絡を取ってきたのだった。
これからお伝えすることは、バーでの同級生同士の会話です。
その中で、お子さまの成績アップや志望校合格を実現するために、どういう親であることが望ましいのか?、逆に、どういった親の言動が子どもの成長を妨げているのか?について触れています。
そして、友人のことを思うがゆえ、またお酒も程よく入っていることから、三井からの厳しい言葉もございます。
以上をご理解のうえ、お子さまの成績アップおよび志望校合格を後押ししたいとお考えの保護者さまにおかれましては、つづきをご覧ください。
成績が伸びない隠れた理由とは?

息子が、今度から5年生でさ、来年ウチは中学受験させようと思ってるんだよね。
だから、4年生から塾に行かせてるんだけどさ。
今は「XX中学」をめざしてるんだけど、そこに合格できるレベルの学力基準にはまだなってないんだよね。
お金払って塾に通わせてるんだから、ちゃんと成績上げてほしいんだけどさ。
塾変えたほうがいいのかな?と思ってて。

そうなんだ。
ちなみに、息子さんは転塾したいって思ってるの?

いや、子どもは今の塾が楽しいって通ってるみたい。
でも、成績上がんないんじゃお金払って親としては塾変えたいって思うよね。

そうだね、まぁオレも子どもが受験したから、その気持ちもわかるよ。
でもね、誤解を怖れず、自分の立場を度外視して言うとね、これまで何十年もいろんな家庭を見てきたけど、子どもの成績が伸び悩む一番の原因って、ズバリ「親の過干渉」だよ。
高橋君の気持ちもわかるし、息子くんにも合格してほしいから、ちょっとキツく聞こえたらゴメンなんだけど聞いてくれるかな。
塾を変える前に、見るべきもの

成績が伸びないから塾を変えようとするのは、成績が伸び悩む子どもにありがちな親の行動なんだよね。
そしてこの場合「成績が伸びない原因がどこにあるのか?」を考えないで、塾を変えればうまく行くと思っていることが多いんだよ。
でも、それは大きな間違い。
オレの経験から言うと、今のケースだったら塾を変える必要はないと思うよ。
しかも、本人が望んでないのに塾を探していたとしたら、それは過干渉気味だと思う。
逆にね、成績が伸びる親ほど客観的に子どもを見られる。
だから、成績が伸びないのを全部子どものせいにしたり、全部塾のせいにはしないんだ。
事実を冷静に判断できるんだよね。
例えば、塾からアドバイスされたことを、全然やっていないっていう子も中にはいたりするんだよ。
だけど、それを把握せずに「成績が伸びないから塾変えよう」って考えたり、子どもに「なんでやんないんだ!」って感情のままに怒っちゃう親っているんだよね。
けど、そこで「自分も子どものこういう所、ちゃんとわかってなかったな」とか「子どもが勉強しやすくなるような、家での環境とか仕組みを考えたほうがいいな」って考えられる親だと、子どもは伸びるよね。

いやぁ、マジかぁ、オレそれやっちゃってたわ…。
慎ちゃん(=三井)に聞けてよかった。
もっと、親としてこうしたほうがいいとか、こういうの親としてはダメっていうのがあったら教えてくれないかな?三井“先生”。

あはは、高橋君の先生じゃないから。
でも、そうやって聞いてくれるとうれしいよ。
そうだなぁ…。
例えば、子どもの成長に合わせて、声かけを変えられない親っているんだよね。
いつまでも子どもを小さいときのまんま扱って「親の言うことを聞くべき」って強制しがちだったりするんだよね。
でも、そういう子どもの成長を理解して、いつまでも親に従わせようとするのがよくないって気づいて、声かけを変えたりっていうのは大事かな?
「2割変える」親が伸ばす

あとね、オレが自分の塾で「保護者会」とか「親子ガイダンス」っていう親子で参加できるセミナーみたいなのもやるんだけどさ、その中でよく言うのが「今までの2割を変えればいい」っていうことなんだ。
「2割変えればいい」って親が思えると、子どもは伸びるんだよね。
それって勉強のことだけじゃなくって、例えば「スマホの使い方」とかもそうなんだ。
よく保護者から「ずっとウチの子、動画見てます、ゲームやってます」って言われるんだよね。
でも、意外と子ども自身が「さすがに多いな」って気づいて、ちょっとスマホ見る時間を減らそうってすることもあるんだよ。
そしたらさ、今までよりスマホの時間が減るわけだから、それだけでもよくない?
そこでね、子どもの小さな変化を認めてあげてほしいんだよね。
子どもの小さな変化を認めてあげるって、すっごい大事だから。
それで、そこからまた“ちょこっとだけ変えよう”って子どもに提案してほしいんだよね。
意識してるのか、無意識なのかはわからないけど、成績が着実に伸びてる子の親ほどそういう傾向にある。
逆にね、伸び悩む子の親ほど「10 or 0」で考えているっていうか、ガラッとした変化を求めがちなんだよね。
例えば、オレが「毎日の時間の使い方は、こういう風にしていきましょう」ってアドバイスして、でも数日やってみてできなかったら「やっぱりウチの子ダメです」って決めつけちゃったりするんだよね。
きっと、子どもだけじゃなくて自分にも厳しいんだろうね。
でもそれだと、ちょっとダメだったら、すぐ「塾変えよう」って考えがちになっちゃって根本改善にならない。

そうだよなぁ。
ウチの息子も成績はまだそこまで伸びてはきてないけど、最近は自分から時間決めて、自分で部屋に行って宿題やるようになったもんなぁ。
そういうのも、ちゃんと褒めてやんないといけないよね。
「もっと」が逆効果


何かお飲みになられますか?
2人の教育トークはつづき、気づけばグラスは空になっていた。
時刻は、21:34を過ぎていた。

休みの日とかもさ、何も勉強してなかったら「いいの?」って思っちゃうんだよね。
ただでさえ、今、志望校の合格ラインに届いてないわけだからさ。

それもよく言われるんだよね。
「子どもが休みの日、何も勉強しません。土日に何をすべきか?管理してください」って。
受験生やテスト前じゃなかったら、塾や学校の宿題さえやっていたらいいんだよ。
大人だって、いつも休みの日に仕事しないよね。
高橋君、会社から土日に仕事をするように管理されたらイヤだろ?

絶対イヤ!マジ、ブラックだから!その会社!

それを子どもにやっちゃうんだよ。
塾や学校の宿題以外に、プラスアルファを求めるんだよね。
「もっともっと!」って子どもに勉強を強制しちゃってるんだ。
でもね、先生とか親に指示されたり、強制してやらされる勉強はつづかないよ。
自分に置き換えてもそうじゃない?
それと、子どもは管理されると親が見てるときは勉強をやっている“フリ”をするようになるんだよね。
そりゃ、当然成績は伸びないよ。
なのに「勉強してるのに成績が伸びてない。だから、子どもにもっと勉強をさせよう」とか「勉強してるのに成績が伸びてない。だから塾を変えよう」って考えちゃう親がいるんだよね。

たしかになぁ、子どもが自分から「勉強したい」って思うように、環境だったり声かけだったりを変えたほうがいいね。
成績は親子関係で決まる

そう、今の高橋君でずっといられたら、それと奥さんも同じ考えで息子くんに接してあげられたら、息子くんは自然と成績伸びていくと思うよ。
究極的にはね、子どもの成績を伸ばしたかったら親子関係をよくするしかない。
実際、親子関係が悪い家庭で成績がいい子どもはいないんだ。
ただね「ケンカが多い=親子関係が悪い」じゃないんだよ。
ここが大事なトコなんだよね。
親子関係のいい・悪いを“勘違い”している親もけっこう多いんだ。
大事なのは、ケンカしようが子どもと「ちゃんとコミュニケーションが取れているか?」なんだよ。
例えばさ、さっき言った親子ガイダンスのときに保護者の人に「お子さんが今、興味を持っていること、仲のいいお友だちを書いてください」って言うの。
それで、その回答を子どもに採点させるんだよね。
コミュニケーションが取れていない家の親は、回答が間違ってるんだ。
答えを書いて間違うこともあれば、答えを書けないこともある。
特にさ、友だち関係はアップデートされやすいから、今はそこまで仲よくない友だちの名前を書いてたりするんだよね。

うわぁ、オレもヤバそう。今、誰とよく遊んでんだっけなぁ?

あとね、コミュニケーションでよく勘違いされるんだけど「早くお風呂入りなさい」とか「早く寝なさい」とかは、コミュニケーションじゃないから。
それは命令だからね。
その一言が心を閉ざす

だからって言って「今、何に興味あんの?」とか「今、仲よくしてる友だちって誰?」ってストレートに聞こうとするのもコミュニケーションとしてはあまりよくない。
でさ、特に思春期の子どもはさ、日々テンションが違ってたり、急に何も話したがらないことも多いんだよね。
だから、親のほうからあれこれと聞こうとするよりは、子どもから話しかけてくるのを待ったほうがいいよね。
ただ、コミュニケーションが下手な親って、子どもが話しかけてきたことを批判しちゃうんだよ。
例えばさ「友だちと〜〜行って…」みたいなことを子どもから話しかけてきたら「え!そんなトコ行ったの?」みたいな、否定的・批判的な言い方をしちゃうんだよね。
子どもが話したくなくなる“返し”をしちゃうんだ。
こうなると、その先に待ってるのは悪循環しかない。
子どもが話さなくなるから、親のほうからあれこれ手を出そうとする。
これが、過干渉になるんだよ。
親子関係が悪いと、過干渉になりがち。
逆の見方をすれば、親が過干渉だから親子関係が悪くなる。
過干渉になると、子どもの成績は伸びない。

そりゃ、そうだよなぁ、オレでもわかるよ。
絶対やっちゃダメだよね。
誰も幸せになんない。
慎ちゃん、オレって過干渉なのかなぁ?
何したら、過干渉になるの?
それ、過干渉かもしれない

いや、高橋君が過干渉かどうかは、もうちょっと詳しく状況を見聞きしないとわからないよ。
それに、これをしたら過干渉とは言い切れないな。
ケースによっては、同じことしても最適なサポートだって言える場合もあるし、過干渉だって言える場合もあるよ。
ただね、過干渉になりやすい行動っていくつか傾向はあるんだよね。
過干渉な例①:どのようなカリキュラムで進んでいますか?

ウチの塾で、よく「どのようなカリキュラムで進んでいますか?」って問い合わせで聞かれるんだよ。
ぶっちゃけ、勉強ができる子だったらいいとは思うの。
でもね、勉強できる子も含めてだけど、その子の現在の学力とか性格とか、成績が伸び悩む要因とかを無視してカリキュラムだけあったって、それは絵に描いた餅だよ。
本来のカリキュラムっていうのは生徒ごとに変わるし、一人の生徒でもその日そのときどきの状況で毎回変わるものなんだよ。
進むときはどんどん進むし、ゆっくりやんないといけないときはゆっくりやるべきなんだ。
どこでどんどん進めるか、ゆっくりやるべきかは、確実にひとりひとり違うからね。
この手の質問をする人は、キレイな表でできたカリキュラムを求めていると思うんだよね。何月に〜〜の単元をクリアして、そのつぎに〜〜の単元に入ってみたいな。
でもさ、仮にそういうカリキュラムを立てたとしても、そのとおりに進めるっていうことはほとんどない。
子育てと一緒だよ。
キレイな表でできたカリキュラムがあると、それを消化することが目的になっちゃうんだよね。
ただ、カリキュラムを消化するための勉強するのは意味がないよ。
だから、キレイな表があっても意味がないってオレは思ってる。

でもさ、それだと受験に間に合うの?

そう、今の説明をすると「受験に間に合いますか?」って聞かれる。
子どもも聞いてくることがあるよね「受験に間に合いますか?」って。
でもさ「“間に合わない”って答えたら辞めますか?」って話なんだよ。
間に合うんじゃなくて、間に合わせるんだよ。
だから、生徒によって勉強にかかる時間が変わるんだ。
たしかに、キレイな表になったカリキュラムがあると親は安心だよ。
でもそれって「ウチの子がどこをやっているのか?」を知りたいという過干渉なんだ。
もしくは、ウチの塾の場合だと大手塾でカチッとやっているところと比べて遅れを取っていないか知りたいんだと思うんだよね。
それで、他塾とか他の子より遅れていると思ったら「もっとやらせてほしい」って言ったりもするんだ。
でも、もう今まで話してきたから高橋君はわかってくれてると思うんだけど、それは過干渉なんだよ。
子どもたちは、カリキュラムのことは全然気にしていない。
それよりも、受験に間に合わせるために日々、目の前の課題をがんばってる。
だから、カリキュラムよりも目の前の子どもをしっかり見守ってあげてほしい。
キレイなカリキュラムを求めるのは、本当の意味で子どものためにはならないよ。
ウチの塾には、本当の意味でのひとりひとりのカリキュラムはあるけど、親御さんが望むようなキレイなものはない。
でも、自分も大手塾とかに勤めた経験があるけど、本当はそれが一番大変なやり方なんだ。
そして、キレイな表以上に大変だけど、価値あるやり方でもあるんだ。
過干渉な例②:毎回の授業内容を知りたい

つぎによくあるのは「毎日の授業内容を報告してほしい」っていう要望。
塾によっては、毎回の授業内容を親に報告している塾もあるみたいなんだよね。
毎回の授業で、子どもが何をやっているのかを知りたいんだと思うんだ。
でも、ウチは“あえて”出してないんだよ。
なぜなら、授業報告が親子関係を悪くするきっかけになっちゃうことがあるから。
授業内容が把握できると、親としては「今日これ習ったらしいけど、ちゃんとわかった?」とか「塾でこれやったはずなのに、学校のテストで正解できなかったじゃない」みたいなこと言いたくなるんだろうね。
それはどう考えても、親子関係は悪くなるよ。
だからウチの塾ではさ、さっきのカリキュラムもそうだし授業報告もなんだけど、ちゃんと理由があってやらないようにしてるんだ。
過干渉な例③:手取り足取り見てほしい

塾に「手取り足取り見てほしい」っていうような、塾に親の代わりを求めているケースもあるよね。
「親がやってあげたいけど、言うことを聞かないから代わりに誰かにやってほしい」的な気持ちなんだと思う。
でもさ、今まで手取り足取りやってきたから現状を招いてしまってるってことも少なくない。
例えば、こないだ小学生がウチの塾で体験授業を受けてくれたときにね、ちょっとわからなくて手が止まっちゃったんだよね。
そしたら、すかさずその子の親御さんが手を出してきたんだよ。
親が手を出すから、子どもは「やらなくていいや」になっちゃうんだよね。
だから「自分でできますから、自分でやらせてください」って言ったんだ。
だってさ、子どもがまだ赤ちゃんのときに歩き出そうとした瞬間に、手伝わなかったじゃん。
どの親もさ、見守ってたと思うんだよね。
その姿を見て「すごい!すごい!」って褒めながら見てたじゃん。
だから、今もそれでいいんだよ。
けなすこともしなかったよね。
「今日、2歩しか歩けなかったじゃない」なんて言わなかったよね。
でも、今、勉強でそういうことを言っちゃうんだよ。
過干渉な例④:「勉強しなさい」と言ってしまう

子どもに「勉強しなさい」って言っても、ひとつもいいことはない。
特に、ウチの塾の場合、保護者には「勉強は塾がすべて面倒見ますので、お家では“勉強しなさい”って言わないでください」って言ってるのに、それでも生徒に聞くと言っちゃってる人もいるみたいなんだ。
だってさ、自分に置き換えたらさ、毎日「仕事しろ」、「家事しろ」って言われたらイヤだよね。
イヤっていうか、辞めたくなるよね。
過干渉な例⑤:質問が多い

塾のことだけじゃなくて、子どもについての小さいこと、すごい細かいことが気になりすぎている人もけっこう多いよ。
例えば「授業中、途中でトイレ行きたくなったらどうすればいいですか?」って質問する人がいるんだよ。
「本人に言わせなさい」って思うよね。
ってか、学校ではどうしてるの?って思うよ。
そういった、あらゆる「子どもがこうなったらどうしよう」っていう心配事を作り出しているっていうかさ。
でも、仮にトイレに行きたくなったとしても、そこで親が手を出してしまったら自分では何もできない子になっちゃうじゃん。
自分で何とかできるようにさせてあげないと、子どもが一番困るじゃん。
質問って言えば「同じ学校の子は何人いますか?」っていうのも多いかなぁ。
このケースって、子どもに聞く前に親が「子どもが同じ学校の子が多かったらどう思うのか?」を気にする傾向があるんだよね。
もし、同じ学校の子がたくさんいてイヤなら遠くの塾に行かせたらいいと思うんだけれど、そしたら「通塾がかわいそう」って言うんだよね。
まずは、子どもがどうしたいか?が一番だよね。
同じ学校の子が多いから遠くの塾に行きたいって言えばそうしてあげたらいいし、同じ学校の子が多くても近くの塾がいいって言えばそうしてあげたらいい。
親が、子どもに対して過干渉になると、子どもの生きる力が奪われちゃうんだよ。
あと、余談だけど「これはどうしたらいいですか」、「あれはどうしたらいいですか」っていうアドバイスを求めるけど、聞いて満足しちゃってる人もいる。
アドバイス通りに実行しないから、状況が変わらないんだよね。
三井が守りたいもの

三井の白熱した高橋君への“講義”は、気づけば22時を回っていた。

いやぁ、オレ過干渉やってたわ…。
まず、成績伸びないから塾変えようっていうのはナシだね。
いっぺん、息子と話してみる。
ありがとう、慎ちゃん。
もっと家が近かったら、三井塾に子ども通わせるのになぁ。

こちらこそありがとう。
でも、高橋君が過干渉のままだったら入れないよ。
もちろん、過干渉だったって気づいて変わろうとする人は受け入れられるけど「このやり方が正しいんだ」って思う人はウチの塾じゃないほうがいい。
もちろん、子どもにとって合う塾を選ぶことが一番大事だからね。
ウチの塾にも「三井塾がいい」って信じて通ってくれる子どもたちがいるから、その子たちのためにも三井塾はどんな人でも入れる塾にはしてない。
いくらお金を積まれたとしても、こういう人は受け入れないっていう人はいるよ。
子どもたちを守らないといけないから。
じゃあ、そろそろ行こうか。
今日は、オレもとっても楽しかったよ。
ありがとう、高橋君。

(バーテンダーに)すいません、チェック(会計)お願いします。
-おしまい-

